2025年8月19日教育活動
株式会社松屋フーズホールディングス 瓦葺 一利氏ご登壇
株式会社松屋フーズホールディングス(以下、松屋)よりご担当者をゲストにお迎えし、「金融機関のウェルスマネジメント戦略とファミリービジネス」において、新商品開発や人材マネジメントの実践に関するご講演をいただきました。
松屋は、言わずと知れた日本を代表する外食企業であり、創業以来、牛めしを中心とした業態で多くの顧客に親しまれてきました。講演では、企業成長の裏側にある試行錯誤と仕組みづくり、そしてファミリービジネスならではの理念と組織運営について、多くの具体的なエピソードを交えてご紹介いただきました。
特に印象的だったのは、プロパー社員が現場経験を活かして本部で活躍している点や、専門人材との連携を図りつつ全社的なエンゲージメントを高めている姿勢でした。コロナ禍という困難な状況においても、人員整理を行うことなく全社一丸となって乗り越えた組織力の強さは、受講生にとって学びとなりました。
講義の中では、「仕組み化が重要」というメッセージが繰り返し語られました。人事においては“正当性”が最も重要であり、責任と権限の明確化を通じて、自らの意思で動ける体制を整えることが、組織としての強さにつながるとのことでした。また、「自発的な挑戦に伴う失敗は貴重な資産になる一方、他動的に与えられた失敗は学びにくい」という実践的な知見は、学生たちにとって非常に示唆的な言葉となりました。
商品開発やマーケティングにおいても、「論では成り立たない」「狙って当てにいくのではなく、複合的な要因を見ながら挑戦する」という柔軟な姿勢が紹介されました。これまでに約1,000商品にのぼる“失敗”の蓄積の上に現在の製品ラインナップが築かれているという事実には、多くの学生が驚きと敬意を持って耳を傾けていました。さらに、自社工場やセントラルキッチンを活用したスピード感ある内製化の取り組みも、新たな価値創出を可能にしていることが示されました。
組織運営においては、「出し手」と「受け手」の間にある信頼と責任のあり方が重要であるという話も印象に残りました。先代経営者は院政を敷かずに潔く一線を退き、後継者は「会長と意見が違った場合には、会長の意見を通してほしい」というルールを事前に共有するなど、信頼を基盤とした事業承継が実践されていたことが紹介されました。こうした信頼関係に基づく組織文化は、まさにファミリービジネスの強みを体現するものでした。
最後に、企業が“色”を失わないための根本的な指針である理念を守り続けることの重要性について触れられました。ファミリー企業は短期的な利益を追い求める必要がないので、理念を重視することができ、これがファミリービジネスの強みである。ということが力強く語られました。これは、目先の利益よりも社会的価値の創出を重視し、企業活動を通じて長期的な信頼と貢献を果たすという、松屋の経営哲学を象徴するものでした。
講義を通じて、受講生は「仕組みと理念が両立する組織づくりの難しさと意義」、そして「ファミリービジネスが持つ長期的視野と価値観」の大切さを学ぶ貴重な機会となりました。外食産業の枠を超えた、組織・人材・経営に対する深い洞察が詰まった、非常に学びの多い講義となりました。
2024年10月30日(水)

