計算と経営実践

著者名 國部克彦(著), 澤邉紀生(著), 松嶋登(著)
タイトル 『計算と経営実践』
出版社 有斐閣 2017年2月
価格 4752円 税込

紹介

経済世界は無数の計算実践から構成されている。このような主張は,経済学から見れば違和感があろう。しかし,経済行為を分解していけば,行為を駆動するメカニズムの最小単位として,必ず計算という実践に行きつく。経済生活の中で枢要な場所を占める計算であるが,実際にどのような計算メカニズムが駆動して社会が構成されているのかについては,まだ私たちは誰もよく分かっていない。分かっていないにもかかわらず,社会が動いていくことが現代的なリスクを発生させる原因でもある。

現代社会における計算実践の重要性については,すでに世界的には注目され,いくつかの研究潮流も生まれているが,日本ではまだまだ少数派である。しかも,経営学と会計学にそれぞれ分かれて存在していた。そこで本書では,経営学と会計学の視点を統合して「計算と経営実践」について多面的に議論することによって,計算という問題領域の重要性を広く理解してもらうことを目的としている。そこでは,近い間柄でありながら,年々疎遠になりつつある経営学と会計学の邂逅も達成されている。

本書の内容は,「計算と経営実践」に関して,包括的に議論するというよりも,理論面でも実践面でも問題提起の側面が強いものである。これは計算と経営実践をめぐる研究領域が他の伝統的な分野に比べてまだ新しいためでもある。しかし,これまで見過ごされてきた計算という重要な局面を経営実践の中で蘇らせ,新しい研究潮流への流れを少しでも刺激することができれば,本書の目的は達成されたことになると考えている。

目次

序章: 計算を中核として組織化される経営実践「見失われていた豊饒な地平」の発見

第1部 計算へのまなざし
第1章 計算が創る市場・組織・社会
第2章 勘定と感情 会計実践における目的志向性と感情性
第3章 市場取引の神々 計算と交換を支える制度ロジックスの超越と内在

第2部 経営実践の検討
第4章 計算の銘刻としての会計 組織変化の理解に向けて
第5章 イノベーションの駆動と会計計算 「計算の方程式」に着目した一考察
第6章 可視性の創造と変容 マテリアルフローコースト会計実践の時系列分析
第7章 人材を計算可能にするアレンジメント 人材紹介を活用した中途活用の比較ケース・スタディ
第8章 金融理論の実践 クレジット・スコアリングに基づいたアルゴリズミックな布置の日米比較
第9章 企業者の計算実践 事業計画の自己拡張と整合化
第10章 企業間取引の物質的実践 金属切削加工を可視化する計測機器

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