金融機能と銀行業の経済分析


著者名 内田浩史 著
タイトル 金融機能と銀行業の経済分析
出版社 日本経済新聞出版社 2010年12月
価格 4410円 税込

書評

間接金融の中心として経済成長を支えたわが国の銀行業も、バブルの崩壊から金融危機・不良債権問題を経て様々な問題を露呈してきています。預金で集めて貸出を行うという従来のビジネスモデルの限界から業態を超えたビジネスを展開するメガバンク、ユニバーサルバンク、市場型間接金融などが重視される半面、中小の地域金融機関についてはリレーションシップバンキングと言う名のもとに従来からのビジネスモデルが再検討されています。

このように時代を経て大きく変化し多様化する「銀行」とは、そもそもどのような企業なのか、これまで銀行はどのような機能を果たしたのか、今後果たすべき機能は何なのか、銀行の強みや収益源、他の金融機関や企業にはない銀行の独自性とは何なのか。こうした疑問に答えるため、金融機関・銀行の機能を明らかにし、その潜在的な収益源やビジネスモデルを考えるための視点を提供して、さまざまな金融現象や金融問題を理解し解決するための基礎を示そうとしたのが本書です。

本書は三部構成になっています。全体の内容を概説する本章(序章)に引き続き、第Ⅰ部では金融機関・銀行の機能に関する理論研究の成果をまとめ、以下のパートの理論的基礎を示します。第Ⅱ部では、これまで日本において銀行のあり方を描写するのに用いられてきた四つの銀行モデル(メインバンクモデル、ユニバーサルバンクモデル、リレーションシップバンキングモデル、そして市場型間接金融)について、第Ⅰ部で整理した理論に基づき機能面から検討します。そして第Ⅲ部では銀行が貸出を通じて発揮すると考えられている機能に関して、日本の中小企業データを用いた包括的な検証を行います。

本書は筆者が行ってきた一連の研究の成果をまとめたものです。専門的な学術論文を元にしているためすべてを読み通すのは大変かもしれませんが、序章の解説部分を手がかりに、興味をお持ちの部分だけでもご覧頂き、何らかの示唆を読み取っていただければ幸いです。

はじめに
第I部 金融機関と銀行の基礎理論
 第1章 金融機関の機能
 第2章 貸出技術と金融仲介機関の機能
 第3章 貸出・預金業務と銀行の機能
第II部 日本の銀行モデル
 第4章 メインバンク
 第5章 銀行業と証券業
 第6章 リレーションシップ・バンキング
 第7章 市場型間接金融
第III部 日本の貸出市場の実証分析
 第8章 貸出技術
 第9章 銀行組織と貸出
 第10章 リレーションシップ貸出のメリット
 第11章 融資担当者とリレーションシップ貸出
終 章 金融機能と銀行業の経済分析に関する今後の展望
参考文献
索引