経営学


著書名 佐々木弘 奥林康司
タイトル 経営学
出版社 財団法人放送大学教育振興会 2003年3月
価格 2900円 税別

書評

経営学は、原則として、企業をいかに経営していくかに関する経験的知識を集大成した学問である。本書では、学部専門課程の学生を念頭に置き、経営学の基本的な知識を提供することをめざしている。

本書の特徴は次のようにまとめることができる。

第1に、経営学を管理論や組織論などの専門化した研究分野から説明するのではなく、日本企業の経営全体を前提にして、その特徴を多面的に明らかにしていることである。日本的経営を特徴づける言葉として「三種の神器」、「護送船団方式」、「トヨタ生産システム」など日常でもよく耳にする言葉がしばしば用いられる。それらの特徴を積み重ねて考えることによって、日本的経営の全体像が浮かび上がる。経営学を専門的に学ぶ入り口においては、このような日本的経営の骨格を大掴みに理解しておくことが大切である。

第2に、企業経営を全体的にみるとき、企業内部に関する知識と企業外部に関する知識の双方が必要であることである。企業内部に関する知識とは企業の管理運営に関する知識であり、企業外部に関する知識とは、例えば系列下請などの企業間関係に関する知識や企業に対する政府の規制など企業と政府の関係に関する知識である。前者は経営管理に関する知識であり、後者は経営行動に関する知識である。いわば「うち」と「そと」の両方の知識を共に明らかにしている。

第3に、第二次世界大戦以降のわが国において日本的経営に関して議論されたいろいろな論点を歴史的な時代区分の中で整理していることである。第二次世界大戦以降のわが国の経済発展を、特に企業経営の発展の観点から、高度成長期、安定成長期、グローバル成長期に区分し、それぞれの段階で日本的経営はどのような特徴をもち、またそれらがいかに変化してきたかを明らかにしている。そのような歴史的展望の中で21世紀における日本的経営の発展方向を見定めることができる。

皆さんの知的関心を企業経営に誘うことができれば本講義の課題は達成されたと言えよう。

目次

 1― 日本的経営の諸特徴
 2― 終身雇用制
 3― 年功賃金制度
 4― 企業別組合
 5― 系列・下請け
 6― ME技術革新と新しい組織構造
 7― チーム作業方式
 8― フラット型管理組織
 9― 雇用制度のフラット化
10― 成果主義賃金
11― ネットワーク型企業間関係
12― 規制と規制緩和の諸問題
13― 公的サービスの供給方式の多様化
14― アメリカにおける日本的経営
15― 中国における日本的経営