営業改革のビジョン-失敗例から導く成功へのカギ-


著者名 高嶋克義
タイトル 営業改革のビジョン-失敗例から導く成功へのカギ-
出版社 光文社新書 2005年3月
価格 700円 税別

書評

この本では、さまざまな企業における営業改革の事例を詳細に検討することを通じて、営業改革において、どのような問題が発生するのかを示しながら、営業改革をいかに進めるべきかの指針や方法を具体的に提示しています。

この本でいう「営業改革」とは、営業の仕事の進め方を変えることです。そのような営業改革は、ソリューション営業、 CRM (カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)、 SFA (セールスフォース・オートメーション)と言った最近のキーワードを伴って多くの企業に導入されはじめています。

しかし、多くの企業が営業改革の必要性を認識し、熱心に取り組んでいるにもかかわらず、なかなかスムーズにいかずに困っているという話をよく耳にします。提案営業への転化が社内で提唱されながら、従来からのご用聞き営業が行われていたり、営業のデータベース・システムが導入されながら、データベースが利用されなかったりするのは、その典型です。

営業改革を進めていく過程では、当初想定していなかった問題が次々と発生し、それにきちんと対処していくことは、意外に難しいことです。そして、営業改革の途上で、そのような問題にきちんと対処したのか、起こりうる問題を予測して、防止策を細かく考えていたのかといったことが、改革の成否を分けることになります。

例えば、データベースを導入する場合には、「データでは営業ができない」「データに載らない情報こそ重要である」という“常識”をどううち破るかが重要になってきます。チーム営業を推進するためには、技術者の出身部門への帰属意識や一時的な参加意識をどう解消するかといった問題が大きな障害となってきます。さらに、プロセス・マネジメントを導入するためには、「営業とは売ってなんぼ」というアウトプット管理の発想をどう克服するが鍵となります。

この本では、こうした営業改革のさまざまな障害がどのような形で発生するのかについて、多様な企業の事例を使って具体的に説明するとともに、それぞれの解決策を事例ごとに検討しています。これらを理解することは、営業改革で陥りやすい失敗を回避して、営業改革を成功させるうえでは、不可欠なこととなります。

目次

第 1 章 営業改革とは何か
営業改革がめざすもの
なぜ営業改革か

第 2 章 失敗の事例(1)-使われないデータベース
情報システムを利用した営業
データベース営業の難しさ
面倒なデータ入力
書き表しにくいデータ
「有視界飛行」から「計器飛行」への転換

第 3 章 失敗の事例(2)-機能しないチーム営業
なぜチーム営業は注目されるのか
内部調整の問題
チームと外部との調整問題

第 4 章 失敗の事例(3)-難しいプロセス管理と標準化
「考える営業」のベース-プロセス管理
なぜアウトプット管理から抜け出せないのか
プロセス管理の難しさ
営業の標準化とは

第 5 章 失敗を成功へと導くカギ
組織に潜む四つの問題
営業の曖昧さと多様性をいかに乗り越えるか

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