キャリアで語る経営組織


著者名 稲葉祐之 井上達彦 鈴木竜太 山下勝 著
タイトル キャリアで語る経営組織
出版社 有斐閣 2010年5月
価格 2100円 税別

書評

本書は、会社組織の中でのキャリアステップのストーリーに沿って、関わる経営組織論のスタンダードなトピックを概説・解説していくテキストです。本書の特徴は、まず「問い」の連鎖によって解説を進めていく点です。例えば、第2章では、なぜ就職した先輩たちは雰囲気が変わっていくのだろうか→なぜ会社は新人を積極的に社会化していくのだろうか→本当に誰もがすんなり組織と仕事に適応できるのだろうか→・・・と問いが続き、それに答える形で経営組織論のトピックが解説されています。この本を手にした方は、すぐに読み進めずにぜひこの問いに自分なりに答えながら、読んでほしいと思います。

2つめの特徴は、組織の中の異なるレベルのトピックを並行して紹介している点です。例えば、第1章では、欲求に関する個人のレベルのトピックと会社の目的や機能といった組織・社会のレベルのトピックが紹介され、その関係についても解説しています。実社会ではこのように異なるレベルのトピックの問題が同じ場面で登場します。例えば、ルールや規則をしっかり決めれば効率良く組織運営ができるが、そこで働く人のモチベーションが下がってしまう、しかしやはり効率も大事だというように、異なるレベル間の問題は、解決において時にジレンマを起こすことがあります。本書は、このようなジレンマを意識しながら読み進めてもらうことによって、学生には疑似体験をするように、実務家には追体験をするように経営組織論を体感するように読んでもらいたいと考えています。

目次

第1章 キャリアを考える:個人の欲求と会社の目的
第2章 入社する:社会化と組織文化
第3章 会社と仕事に慣れる:モチベーションと規則の関係
第4章 人事異動:会社のなかでのキャリア開発
第5章 部下を持つ:リーダーシップ
第6章 部内をまとめる:集団のダイナミズム
第7章 トラブル発生:コンフリクト・マネジメント
第8章 あこがれの経営企画室へ:組織のデザイン
第9章 部長たちの奮闘:環境のマネジメント
第10章 事業を背負う:組織変革とトップの役割
第11章 ついに社長就任:経営理念とビジネスシステム
第12章 ビジネスのさらに先:経営にできること