キャリア開発と人事戦略


著者名 奥林康司 平野光俊 編著
タイトル キャリア開発と人事戦略
出版社 中央経済社 2004年6月
価格 3800円 税別

書評

キャリア開発に関する関心は組織の側と個人の側の双方から高まっている。組織の側から見れば、終身雇用制度を前提とした教育訓練体制は限界にきており、従業員の自発性に基づく能力開発を必要としている。個人の側からすれば、定年までの雇用機会や会社が提供する能力開発に依存できなくなり、自発的にエンプロイヤビリティーを高めざるを得なくなっている。

本書は、日本の先進的企業におけるキャリア開発に実態と社員の対応を実証的に明らかにしている。その特徴は次のようにまとめられる。第1に、キャリア開発と人事戦略がどのように結びついているかを企業の事例において明らかにしている。第2に、会社が提供するキャリア開発制度を積極的に活用しうる自律的社員が如何に形成されるかを社員の意識変化の過程として明らかにしている。第3に、社会人院生の修士論文を基礎にして、その科学的な発見事実を、職場の上司が読んでもわかる言葉で表現している。社会人院生の修士論文を基礎としているため、社会人院生にとっては修士論文として何をどのようなレベルで研究することができるかを具体的に示している。会社の管理者にすれば、社会人大学院に部下を送り出すことによって、どのような成果が得られるかが明らかになる。どちらの視点からでもうることの大きい作品である。

目次

第Ⅰ部 経営戦略と人事戦略
第1章 企業の経営戦略と人事戦略
第2章 製品開発プロセスのスピード化
第3章 子会社の組織改革とミドルの管理者行動
第4章 職務再設計と組織コミットメント
第5章 企業統合における CI 活動の意義
第6章 研究開発効率の向上

第Ⅱ部 キャリア開発とキャリア意識
第7章 自主・自立のキャリア形成を支援するキャリア開発
第8章 キャリアの見通しの形成過程
第9章 人事異動とキャリア意識の形成
第10章 キャリア・パスにおける節目の認識

第Ⅲ部 経営管理とキャリア
第11章 知識創造プロセスにおける主唱者の意図と信頼
第12章 運転ミスを少なくする「暗黙の掟」
第13章 キャリア形成におけるメンタリング効果