国際マーケティング


著者名 小田部正明 K・ヘルセン 著 栗木契 監訳
タイトル 国際マーケティング
出版社 碩学舎 2010年6月
価格 7980円 税別

書評

本書の執筆者の1人である小田部正明教授は、日本で生まれ、アメリカを舞台に世界の第一線で活躍しているマーケティング研究者です。現在世界で最も認められている日本人社会科学研究者の1人だといってよいでしょう。特に国際マーケティング研究の分野では、小田部教授は、世界の第一人者といえる存在であり、各地の学会、ビジネススクール、企業に招かれ、文字通り世界を飛び回っておられます。本学の松尾博文教授とは、かつてテキサス大学オースティン校で同僚だった間柄です。
本書は、グローバル・マーケティングの教科書として、アメリカをはじめとする世界のベストセラーとなっています。また本書は、国と国を横断したマーケティングにおける世界の企業の経験を構造化しながら俯瞰する、戦略的な洞察に溢れる経営指針として読むこともできます。

この名著を、日本語でご紹介できることをたいへん嬉しく思っています。大著ですので、読み通すのはたいへんかもしれませんが、戦略論やマーケティング論の基礎知識があれば、興味のある章、トピックスから読み始めることも可能です。本書を読めば、同じマーケティング・リサーチ、製品ライフサイクル・マネジメント、あるいはSCM(supply chain management)であっても、国内という土俵のなかで勝負する場合と、グローバルなフィールドで展開する場合とでは、ずいぶん異なったものとなることが分かります。あるいは、国内マーケティングの中では見逃されていた問題の構造やビジネスの機会に気づくことができます。

本書の最大の魅力は、グローバル・マーケティングにおける複雑な問題の一面だけを切り取るのではなく、多面的に提示することに努めていることでしょう。現象と理論の対話を幾重にも繰り返していく本書のスタイルは、この多元性を分厚く描き、伝えるのに適しています。そして、この厚みのある多元性の提示は、われわれがグローバル時代のマーケティングに挑む上で必要な、文化的、政治的そして経済的な想像力や構想力を高めてくれるでしょう。本書は、地図や経験の蓄積が整いつつあるとはいえ、まだまだ未知の問題も多いグローバル・マーケティングの世界に、企業人そして研究者が乗り出していくための想像力や構想力を鍛える上での優れた手引きとなるはずです。

目次

第1章 グローバリゼーションを避けることはできない
第2章 グローバル文化環境と購買行動
第3章 グローバル・マーケティング・リサーチ
第4章 グローバル・セグメンテーションとポジショニング
第5章 グローバル・マーケティング戦略
第6章 グローバル市場参入戦略
第7章 グローバル調達戦略
第8章 グローバル製品政策決定I:グローバル市場に向けた新製品開発
第9章 グローバル製品政策決定II:製品とサービスのマーケティング
第10章 グローバル価格設定
第11章 世界の消費者とコミュニケーション
第12章 グローバル・ロジスティクスと流通