実践マテリアルフローコスト会計

著者名 國部克彦 編著
タイトル 実践マテリアルフローコスト会計
出版社 社団法人産業環境管理協会 2008年7月
価格 2800 税別

書評

本書は、現状でのマテリアルフローコスト会計の理論的展開を基礎理論から拡張可能性の点まで含めて解説すると同時に、幅広い業種での導入事例を提供することで、マテリアルフローコスト会計の総合的な理解を高めることを目的としたものです。

マテリアルフローコスト会計とは、企業活動現場において、環境保全と経済効率の向上の同時達成を目指す手法です。日本では2002年に経済産業省が発表した『環境管理会計手法ワークブック』において紹介されて以来、政府機関の強力な支援もあって、着実に企業間に普及し多くの成功事例が蓄積されつつあります。また、2008年からはISO国際標準化を目指して活動が開始されることになり、国際的に新たな局面を迎えています。これは、マテリアルフローコスト会計が他の環境マネジメント手法とは異なり、環境保全を指向するだけでなく、コスト削減による生産効率向上を指向するため、企業の関心を引きやすく、しかも大きな成果を実現する可能性が高いからです。このように、マテリアルフローコスト会計は、環境管理の手法としてだけでなく、企業管理や生産管理の手法として大きな理論的展開の可能性を持っています。本書の第1部では、この理論的展開について基本的な考え方と応用領域の考察を行っています。

また、マテリアルフローコスト会計は、そのオリジナルの考え方はドイツで開発されたものですが、情報システム構築を中心に導入促進を展開してきたドイツとは異なり、日本では製造現場の改善ツールとして位置づけられ、具体的な改善を指向するための手段として位置づけられる傾向が強いです。本書の第2部では、日本企業の中でマテリアルフローコスト会計がどのように理解され、発展してきたのかを分かりやすく伝えています。マテリアルフローコスト会計の企業への導入については、業種や業態によっても適用方法は異なりますし、その導入目的や組織体制によっても効果は異なります。どのような目的で導入し、どのような効果が得られたのかという企業事例の蓄積は、学生だけでなく、マテリアルフローコスト会計の導入を考えている企業や、すでに導入してその改善を考えている企業にとっても大きな参考になるでしょう。

目次

第I部 マテリアルフローコスト会計の理論
第1章 MFCAの基礎と展開(國部克彦)
第2章 モノづくりの管理・改善におけるMFCAの活用方法(下垣彰)
第3章 MFCAのシステム化(中嶌道靖・石田恒之)
第4章 新たな管理会計ツールとしてのMFCAの可能性(中嶌道靖)
第5章 MFCAと経営管理活動への展開(大西靖)
第6章 MFCAとTPM(圓川隆夫)
第7章 MFCAとLCAの統合と活用の意義(國部克彦・下垣彰)
第8章 MFCAのサプライチェーンへの展開(東田明)

第II部 マテリアルフローコスト会計の実践
第1章 キヤノン:職場拠点型環境保証活動<EQCD一体型実現>のツール
第2章 田辺三菱製薬:全社展開に至るまでの戦略的プロセス
第3章 積水化学工業:集計全社展開と有効活用への課題
第4章 日東電工:原価改善と設備投資への応用
第5章 ジェイティシイエムケイ:月次経営指標への応用による現場管理
第6章 島津製作所:無電解ニッケルめっきラインへの適用
第7章 サンデン:金属部品加工工場への適用
第8章 日立製作所:ミニディスク製造工程への適用
第9章 塩野義製薬:化学反応を伴う医薬品製造プロセスへの適用
第10章 日本ペイント:環境配慮型商品製造ラインにおける導入実験
第11章 ウシオ電機:環境生産性向上への適用
第12章 富士通:グリーンプロセス活動による環境影響とコスト指標の統合
第13章 中小企業への導入と効果
第14章 経済産業省の取り組みと今後の展開