構築主義的なマーケティング・リサーチの射程:ケース・ベースト・リサーチの擁護

要約

論理実証主義や批判合理主義のリサーチ・プログラムが有効なのは、普遍法則が定立可能な世界を対象にリサーチを行う場合である。ところが、マーケティング・リサーチのように、その対象領域期において、リサーチャーの内部性や、懐疑論的関係の問題が生じる場合には、普遍法則がそもそも成り立ち得ないという問題が出現する。マーケティング・リサーチは、普遍法則の定立を断念したその先において、マーケターの意思決定における不確実性を削減し、マーケターにより確かな見通しを与えるものでなくてはならない。ではこのとき、マーケティング・リサーチはどのような可能性を追求すればよいのだろうか。本稿では、マーケティング・リサーチが、①マイオピア(自明視されがちな前提に潜在している偶有性)の解明、②状況の構成(状況依存的な秩序を構成する作動)の解明、という2つの役割を果たし得ることを指摘するとともに、この2つの役割をマーケティング・リサーチが担おうとするとき、事例研究(ケース・ベイスト・リサーチ)をはじめとする、質的リサーチによる厚い記述が重要な役割を果たすことになることを指摘する。

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栗木契

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