近代会計理論の生成―19世紀英米文献に見る資本主理論生成過程の点描―

要約

本稿は,19世紀とその前後の時期に英語圏で出版された簿記・会計の文献を史料として,初期の会計理論の生成・確立の過程を検討することにある。具体的には,おそらく最初の体系化された会計理論と考えられる資本主(主体)理論 (proprietorship theory)(または物的二勘定系統説 (materialistische Zweikontenreihentheorie)),つまり,資本主関係 (proprietor-ship) を鍵概念とし,簿記ないし会計の目的を資本主(株式会社であれば株主)に帰属する純財産(=資本主持分)の確定計算と措定して論理を展開する理論について,イギリスのマルコム (Alexander Malcolm, 1718) に始まり,クロンヘルム (Frederick W. Cronhelm, 1818),そして,アメリカのフォスター (Benjamin F. Foster, 1836),ジョーンズ (Thomas Jones, 1841),ブライアント=ストラットン=パッカード (Henry B. Bryant, Henry D. Stratton and Silas S. Packard, 1860),フォルサム (Ezekiel G. Folsom, 1873),スプレイグ (Charles E. Sprague, 1880/1908) らの著作を検討することによって,それが「簿記」の説明理論として生成し展開・確立される過程を跡づけるとともに,ハットフィールド (Henry R. Hatfield, 1909) の著作に見出される「会計」の説明理論への転換とその限界,そして,ペイトン (William A. Paton) により提唱された,資本主理論に代わるべき,少なくともこれと並立する新たな会計理論としての企業主体理論(または企業実体理論)(entity theory) の出現までを文献史的に考証している。

キーワード: 会計史,資本主理論,物的二勘定系統説,企業主体理論,リトルトン,クロンヘルム,フォスター,ジョーンズ,ブライアント=ストラットン=パッカード,フォルサム,スプレイグ,ハットフィールド,ペイトン

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中野常男

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