わが国における会計史研究の先駆者たち――曾田愛三郎・海野力太郎・東奭五郎の簿記史研究について――

要約

海野力太郎(1861 ~ 1944) は,わが国における会計史研究の先駆者であり,わが国に洋式簿記(特に複式簿記)が本格的に導入されて間もない時期に出版された彼の著書『簿記學起原考』(1886) は,会計の歴史を専門的に論じた単行書として,イギリスで刊行されたBenjaminF. Foster のThe Origin and Progress of Book-keeping (1852) に次ぐ,世界で第二番目のものと位置づけられる。
本稿では,一次史料の蒐集と分析が容易でなかった時代に,海外の先行研究に依拠するものではあったが,わが国における会計史研究の先駆的業績とされる海野の簿記史研究について考察する。同時に,彼に先行して簿記史にかかわる論稿を公表した曾田愛三郎,逆に,曾田や海野の著作に遅れるが,簿記の歴史について会計の専門的研究者による最初の論稿を著した東奭五郎の業績についても検討を行い,わが国の会計史研究の黎明期における状況を明らかすることにしたい。

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中野常男

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