「わが国製造業における製品開発マネジメント(原価企画)の現状に関するアンケート調査」報告書

要約

本論文では, 2014年4月に実施した原価企画に関する質問票調査の結果を報告する。調査の結果,次の点が明らかになった。製品開発を取り巻く市場不確実性では,多くの回答企業が新製品の開発と新市場の開拓を重視する一方,ターゲットとなる製品と競合についての知識は概ね十分で,結果として顧客および競合の動向はある程度予測可能であること,販売価格や品質の競争の一定に厳しさはあるものの,回答企業は市場の環境に概ね適応しているようである。製品開発を取り巻く技術的不確実性について,新技術の重要性は高く新製品の開発も定常的に行われているものの,画期的な新技術の登場は比較的稀であり,技術的な環境は経済的な環境よりも安定していると考えている企業が多い。原価企画に対する取り組み状況として,(1)目標原価の管理,(2)マイルストーン管理,(3)VE,(4)コストテーブル,(5)ラグビー型の開発(コンカレントエンジニアリング),(6)人材の多機能化,(7)情報の共有化,(8)サプライヤー連携,(9)トップのリーダーシップ,という9つの手法について,手法の採否および有効性に関する認識について調査した。採用率はどれも高く,概ね70%以上の企業が採用しており,回答企業の約半数が8手法以上を採用している。原価企画と開発成果との関係について,組織能力が高い企業は低い企業に比べて,目標原価の管理,マイルストーン管理,コストテーブル,VEといったツール等の有効性が高いときに開発パフォーマンスがより高まることがわかった。また,原価企画の活用度が高い企業は,高い環境不確実性の下で高い開発成果を上げていることがわかった。

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河合伸

松尾貴巳

梶原武久

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