監査役会の会計・財務の専門性とアナリスト予想の特性

要約

本稿の目的は監査役会の会計・財務の専門性とアナリスト予想の特性の関係について,アーカイバル・データに基づいて実証的に明らかにすることである。
検証の結果,会計専門職(公認会計士または税理士)の資格保有者である監査役を会計・財務の専門性を有する監査役と判断し,その割合や人数などで監査役会の会計・財務の専門性を捉えた場合,監査役会の会計・財務の専門性が高い企業ほど,⑴売上高と営業利益に関するアナリスト予想の正確度が高いこと,⑵予想される業績に関わらずアナリスト間の予想のバラツキが小さいことが分かった。また,追加検証の結果,財務報告の品質をコントロールした場合,⑴や⑵の関係は弱まるものの,統計的に有意な関係が見られることが分かった。さらに,監査役会の会計・財務の専門性が高い企業の方が,継続してアナリスト予想の正確度が高く,アナリスト間の予想のバラツキが小さいことや,監査役会の会計・財務の専門性が高い企業ほど,営業利益と経常利益に関するアナリスト予想が過度に楽観的になることなく,その正確度が高いことも分かった。
本稿は,監査役会の会計・財務の専門性の影響について,会計情報の利用者への影響に注目し,監査役会の会計・財務の専門性が高い企業ほど,アナリスト予想の正確度が高く,アナリスト間の予想のバラツキが小さいという新たな発見事項を提示している。また,近年,監査役会の会計・財務の専門性は社会的に関心が高まりつつあるが,本稿は,その経済的意義について,実証的な証拠を提示している。

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山本健人

音川和久

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