12賢者と語る 和らぐ好奇心

著者名 石黒和義 著 加護野忠男(第3章) 金井壽宏(第4章)対談
タイトル 12賢者と語る 和らぐ好奇心
出版社 日経BP企画 2009年6月
価格 1800円 税別

書評

この本の著者は、元日本アイ・ビー・エム常務で、その後自分の会社を興し、現在はその持株会社の社長です。広報誌でお訪ねになってインタビューを重ねてきたものからピックアップして、この著作ができあがったようです。対談相手は、多種多様な領域にわたっているけれども、経営学関係はふたりだけで、そのなかに含めてくださったのはありがたいことです。自分も、逆に、大勢のひとに対談をお願いする立場で、自分から出向いてインタビューをさせてもらうことが多いので、インタビューするひとの気持ちはよくわかります。

本書全体を通じて、石黒氏が文化に強い関心をもっていることがわかります。経営は競争の世界なので、ぴりぴりすることもありましょうが、「和らぐ好奇心」というのは、自分自身も大事にしたいと思いました。対談のなかで、同じ書籍のなかで対談相手として登壇される加護野忠男教授が、ビジネスの仕組みや伝統産業にうまく備わっている仕組みを素材に話され、わたしが石黒氏の相手をさせてもらっているところでは、組織、コミュニケーション、人事にかかわる話をさせてもらいました。興味深いことに、加護野教授は、伝統産業に長く続いているようなビジネスの仕組みには、同時に人材育成の仕組みも備わっていることにふれられ、生きた経営学は人間学であり、日本の文化は長寿企業の実現に適していると述べられました。打ち合わせをしているわけではないのに、学理と実際の融合が神戸大学では大事にされていることをふまえた対談内容が、符合しているところがうれしく思いました。日本美術の造詣が深く、自らも浮世絵などの蒐集家である石黒氏が聞き手であるのが、よく特徴として出ている対談集になっていると思いました。

目次

第1章 荒俣宏(作家)
第2章 及川茂(日本女子大学人間社会学部文化学科教授)
第3章 加護野忠男(神戸大学大学院経営学研究科教授)
第4章 金井壽宏(神戸大学大学院経営学研究科教授)
第5章 重森千靑(作庭家)
第6章 大鵬幸喜(第48代横綱)
第7章 徳岡邦夫(京都吉兆総料理長)
第8章 戸田奈津子(映画字幕翻訳者)
第9章 増井光子(よこはま動物園ズーラシア園長)
第10章 宮脇昭(横浜国立大学名誉教授)
第11章 李遠明(大連百易軟件有限公司代表取締役社長兼総裁)
第12章 冷泉為人(冷泉家第二十五代当主)