過去の神戸大学MBA公開セミナー

第42回:2020年8月2日(日)14:00~16:15

加護野忠男論文賞受賞者による受賞論文についての発表

8月の神戸大学MBA公開セミナーでは、本学MBA修了生で、2019年度加護野忠男論文賞受賞者の𠮷川智貴氏、溝手紳太郎氏、福永靖氏が、受賞論文のエッセンスを語ります。

  • 𠮷川智貴氏(2019年度加護野忠男論文賞金賞)

私は、JR西日本のイノベーション本部に所属し、将来のありたい姿の実現に向けた技術変革のプロデュースを担当しています。私の役割は、公益的使命を持った交通カンパニーとして顧客のためにできることはないかという視点で顧客ニーズを洞察し、社会情勢や将来予測を踏まえ、どのような意味的、社会的価値を創出していくか構想し、戦略的、論理性を持って事業計画を立てて、技術を用いて変革することです。

本研究では、その価値を創出する手段としてMaaSに着眼しました。MaaSは、近年注目されて、モビリティのパラダイムシフトを生み出す重要な概念とされていますが、具体的な事業手法について書かれているものは多くありません。そこで、「地域のニーズに適応した次世代の持続可能なMaaS事業とはどのようなものか、また、それはどうしたら実現できるのか」をリサーチ・クエスチョンとして、本研究を行いました。具体的な研究手順としては、帰納的分析から得られた様々な示唆から特にプライオリティの高い施策を演繹的に抽出して、エグゼクティブサマリーという形で建議書にしました。私は、帰納的分析と演繹的着眼の両立が建議書であると考えています。リサーチ・クエスチョンに関するアプローチとしては、結論仮説を立て、仮説をライブラリーやフィールドリサーチで検証し、フィジビリティスタディで立証しました。また、経営分析だけでは、イノベーションがなく、劇的なパラダイムシフトを生み出せないので、特定の地域をユースケースとして掘り下げ、地域の方と一緒に考察するといった社会科学の視点と移動やサービスニーズをデジタル技術を用いて可視化するといった自然科学の視点をブレンドして建議書を作成しました。

卒業後は、様々な関係者の力添えもあって、プロジェクトを立ち上げることができましたが、勝負はこれからです。最近は、新型コロナウィルス(COVID-19)により、新しい生活様式が提言されていますが、交通サービスにおいても、アフターコロナを見据えて、地域のまちづくりや生活に寄与する交通事業の変革が必要です。今後は、アフターコロナというパラダイムシフトにも適応し、次世代交通・サービス事業の推進を図りたいと考えています。地域のまちづくりや生活に貢献し、持続可能な交通事業を経営するという「公共性」と「経済性」を両立させた本事業の提供ができるよう尽力していきます。そのような背景を踏まえて、セミナーを聞いていただき、現役MBA生やMBA受験を考えている人への参考にしていただけたら幸いです。

  • 溝手紳太郎氏(2019年度加護野忠男論文銅賞)
昨今のコロナ禍中のように、社会は常に新薬を要請しています。イノベーティブな新薬の創出には優れた創薬プロジェクトリーダー(以下、PL)が特に必要ですが、100年以上に及ぶリーダーシップ研究においてですら、理想的な創薬PLの人物像は明らかではありません。

私は、国内の製薬メーカーにおいて長年研究職に就いていましたが、現在は本社機能である社員育成に携わっています。社員育成の大きな使命の一つが、優れた創薬PLの育成です。そこで、革新的な医薬品を創出した創薬PL 1名を選定し、その人物像に迫り、理想的な創薬PLの特性や行動を明らかにすることで、創薬PL育成方針策定の参考としたいと考えました。

本研究は、『人真似ではない自分らしさ』を重視するオーセンティック・リーダーシップを理論的視座に据えることより、革新的な医薬品を創出した創薬PLの人物像を明らかにしました。なお、本論文のタイトル中の『True North』は、オーセンティック・リーダーシップ研究者のひとりGeorgeが2015年の著書で『人生の基軸』の意として用いています。本発表においては、MBA論文執筆の苦労話も交えてお話しすることで、神戸大MBAコース入学を迷っておられる方への参考になればと考えております。

  • 福永靖氏(2019年度加護野忠男論文銅賞)
企業にとって、イノベーションの重要性が語られない日はありません。私の職場でも常にイノベーションの重要性が謳われ、全社をあげて奨励・推進されてきました。しかしながら、実現にこぎつけ、成功と呼べる実績を収めるものはまだまだ限定的です。いかにすれば、イノベーションのより効果的な実現が可能になるのかを考えたい、それが本研究のきっかけでした。企業組織におけるイノベーションは周囲の多くの協力を必要とする点でリーダーシップとは密接不可分なものであり、また一方、企業組織における長期的成長のためには、組織能力としての「探索」と「活用」の二つが必要であるとされています。これらの視点から、イノベーションをリードするプロジェクトリーダーはいかに考え、行動し、またこれを支える組織的仕組みはどうあるべきか、一緒に考えられたらと思います。

当日のプログラムは以下です。

  • 14:00-14:05 挨拶・注意事項の説明
  • 14:05-14:45 𠮷川智貴氏 『地域のニーズに適応したMaaS事業 -次世代交通・サービス事業の推進と持続的経営-』
  • 14:45-15:25 溝手紳太郎氏『創薬リーダーのTrue North』
  • 15:25-16:05 福永靖氏  『企業組織におけるイノベーション ―非連続的革新を可能にする組織と個人の力―』
  • 16:05-16:15 アンケート・次回セミナーの紹介


参加登録方法:

  1. 「参加登録」リンクをクリックして、 事前登録してください。お申し込み後、登録完了メールにて参加用URLをお知らせいたします。
  2. 登録完了メール内の参加用URLをクリックすると、イベント情報ページが開きますので、「イベントの状態:未開始(登録)」のリンクよりWebexへの事前登録をお願いいたします。

注意事項:

  1. 本セミナーはWebex Eventsを使用して開催いたします。Webex Eventsへのご参加はアプリ経由ではできませんので、当日はウェブブラウザ経由でご参加ください。
  2. 当日の録画、録音、写真撮影は一切禁止とさせていただきます。発覚した場合には、ご退出いただくことがございますので、ご協力のほどよろしくお願いいたします。
  3. 当日、ご連絡なしで欠席された方につきましては、次回よりご参加をお断りする場合がございます。お申し込み後にご都合がつかなくなった場合は、登録完了メールのURLより参加取消の手続きを行っていただきますようお願いいたします。