過去の神戸大学MBA公開セミナー

第35回:2014年7月2日(水)18:30~19:45

震災復興におけるマネジメントコントロール:大規模質問票調査

経営学研究科 教授 三矢裕
大丸松坂屋百貨店業務本部財務部/神戸大学大学院経営学研究科博士後期課程 岡崎路易

 大規模震災のためのBCP(事業継続計画)への関心が高まり、東日本大震災から3年後の現在、大半の大企業ではその整備が行われました。しかし、これは震災直後の応急的対応に過ぎません。応急対応の後、果たして壊滅した施設設備のを再建するための投資評価、もはやガイドラインとしての役割を果たさなくなった中期計画の再検討、公平な業績評価にベンチマークとなりえない予算制度の運用など、復興段階でマネジメントコントロールをどのように行うのかについては実務面でも研究面でもいまだ手付かずの状態です。

 神戸大学の三矢、國部克彦教授、松尾貴巳教授、東北学院大学の佐々木郁子教授、滋賀大学の大浦啓輔准教授らで構成する研究チームでは、東日本大震災の直後より、震災復興におけるマネジメントコントロールのケース研究を行ってきました。その後、2013年には大規模質問票調査を実施しました。
 非常に興味深いファインディングスとしては、次のようなものがあります。
・直接の被害を受けた企業のみならず、サプライチェーンや電力や景気後退の影響が全国の企業に及んでいる。
・被災企業は平常時よりも大規模な投資が必要になるが、それを平常時よりも短期間に、確度の低い限定された予測情報をもとに、シナリオの想定も少ないなかで決定しなければならない。
・環境変化が激しくなれば、予算を業績評価のベンチマークとして利用されなくなることがある。戦略実施をドライブするためには、予算のような計数コントロールよりも、経営理念によって組織を方向付けるという実務が見られる。

 いずれも、まだ「気付き」の段階ではありますが、これらは実務面、研究面でも価値のあるものだと思っています。今回のグッドプラクティスセミナーでは、これらの質問票調査の結果を中心に、ケース研究の成果もあわせて報告します。
この重要な課題について参加者の皆さんと意見交換をできれば幸いです。

 なお、『神戸大学MBAを志望する方のための特別セッション』ではなく、通常のグッドプラクティスセミナーです。ただし、本特別セッションに関連する経営外来は実施いたしません。
 募集人数は75名です。

開催場所:神戸大学梅田インテリジェントラボラトリ